祭事のマナー
 
−ひな人形の飾り方は?
●内裏びなの左右は地方の習慣や家庭の方針で
   三月三日は,女の子の節句であるひな祭りの日です。この日,女の子のいる家ではひな人形を飾り,白酒や菱餅,桃の花を供えてお祝いをします。
   昨今ではひな人形も派手さが競われ,九段や十一段飾りなどが見られるようになりましたが,七段飾りが基本。飾り方としては最上段に内裏びな,二段目に三人官女,三段目に五人ばやしが並びます。続いて左大臣と右大臣が四段目,五段目の三人仕丁,御所軍や御駕籠,貝桶などの婚礼調度品を六〜七段目に飾り,舞踊人形なども下段や脇に並べます。
   内裏びなの左右の位置は,地方によって違いがあります。関東では親王が向かって左,内親王が右ですが,関西では古くからの形どおり,左右が逆になります。どちらが正しいということは言えませんので,地方の習慣やそれぞれの家庭の方針に従って決めればいいでしょう。
●飾りつけとあと片づけは子供と一緒に
   飾る時期は一〜二週間前くらいで,節句が終わったら,なるべく早く片づけるものとされています。これは,長い間飾っておくと娘が将来縁遠くなるという言い伝えのためですが,あと片づけの習慣を「早く」と教えるためだという説も。こういったこともふまえ,ひな人形の飾りつけとあと片づけは,ぜひ子供たちと一緒にしてモノを大切にする心を教えたいものです。
   また,片づけるときには,とくに顔の部分を中心に羽ばたきや新しいバラ筆などでほこりを払います。このあと顔を柔らかい薄紙で包んで,さらに衣装の形がくずれないよう全体を柔らかな和紙で包んで箱へ。人形用の防虫剤や乾燥剤を人形に触れないよう注意して同封し,湿気の少ない場所へ片づけるのが長く大切に保存する秘訣です。

−桃の節句の祝い方は?
●お供えと同じ内容のご馳走を用意する
   年に一度の女の子の節句ですから,女の子のいる家庭なら近所の方や親しい方,友だちなどを招いてお祝いの会を設けましょう。とくに初節句の場合は,古いしきたりにこだわる必要はないにしろ,せめて祖父母くらいは招いて子供の成長を祝い合いたいものです。
   用意するご馳走は,おひなさまに供えるものと同じ。お供えするのはハマグリやサザエなどの貝を皿に盛ったものと,宵節句(三月二日の夜)には赤飯,ハマグリの吸いものとぬた,三日にはちらし寿司が一般的です。招いた人たちをお供えと同じ料理でもてなし,縁起ものの菱餅や白酒,ひなあられなども添えます。祝い膳の内容は,もちろん地方によって風習に違いがあるので,その土地にふさわしいご馳走をつくること,そして子供の好物を何品か用意するといいでしょう。
   招かれた人は,桃の花やケーキ,または子供にぬいぐるみや抱き人形などを贈ります。子供同士の場合は,ハンカチやアクセサリー,文房具などをプレゼントすればいいのではないでしょうか。
   ちなみに,節句の翌日にあたる四日には,お別れにそばを供えて食べる地方もあるようです。

ひな人形とひな祭りの会食の由来
   三月三日は,江戸時代に定められた五節句のうち,上巳の節句(三月の最初の巳の日)にあたります。ひな祭りは,中国で三月の最初の巳の日に行われた「上巳の祓」と,日本に古くから伝わっていた人形に災厄を移して水に流す行事とが一つになったものと言われています。
   現在でもその名残りをとどめる代表的な例は「流しびな」や「ひな送り」。これは,紙や土でつくった人形に目分の生年月日を書き,汚れを移して川に流していたことが始まりのようです。この人形を川などに流さず,室内に飾るようになったのがひな祭りの起源で,江戸時代ごろからの風習だと言われています。
   もともとのひな人形は,手づくりの粗末なもの。四方を縫い縮めた布の中に綿や紙をつめてふくらませ,頭と目鼻をつけた程度のもので,幼児の枕元などに置いておくお守りとされていたようでした。
   また,ひな祭りには,親しい方たちを招いて祝い膳を用意することがあります。こういった会食も,かつての「山遊び」や「磯遊び」に,その所以があるようです。
   「遊び」といえどもこれらは一種の神事で,三月三日には,野山に出て食事をしたり,海で一日遊ぶ風習が各地にありました。この行事では,農耕にさきだって村中揃って季節の花のもとで酒宴を開きます。その季節の花は,もちろん桃の花。現在のように,ひな段に桃の花と白酒,菱餅やひなあられを供えてその前で会食をたのしむという風習も,かつての「山遊び」や「磯遊び」という神事を残した形と言えるでしょう。

 
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