遺骨迎えと精進落とし
−留守番役の仕事は?
●後飾りの準備をする
   告別式が終わったあと,残った世話役や親戚は遺骨を迎える準備をしますが,こまごましたことが多いので,喪家をよく知っている人が残るとよいでしょう。
   自宅で後飾りを設置する部屋を整理し,掃除します。この場合,縁起物や派手な飾り物は片づけておきます。仏式では小机に白い布をかけ,燭台,線香,香炉,鈴,供花,供物などを置き,遺骨,位牌,遺影が戻るのを待ちます。
   玄関や門ロには,火葬場から戻ってきた人が身を清めるために,小皿に塩を入れて盆にのせ,バケツや桶などに水を入れて,ひしゃく,タオルを添えておきます。
   精進落としのための料理は,いつでも出せるように台所係は準備しておきます。
−出棺後に弔問客があった場合は?
●遺骨を迎えてもらう
   出棺してすぐでしたら,世話役は,火葬場の所在地を伝えて行ってもらいます。骨揚げに間に合わない時間なら,遺骨迎えの予定時間を告げて待ってもらうとよいでしょう。焼香は遺骨を安置してからにします。
−火葬場から戻った人を迎える手順は?
●家に入る前に清めの式を行う
   火葬場から戻った人は,塩と水で死の穢れを清めるための「清めの式」を行います。
   喪家の家族でない世話役か手伝いの人にひしゃくで両手に水をかけてもらい,手をぬぐいます。次に胸のあたりに塩をかけてもらい,後ろ向きになって背中にかけてもらいます。略式としては,会葬者同士がお互いに塩をかけあうこともあります。宗派によって行わないことも。
●仏式は「還骨勤行」,神式は「帰家祭」が営まれる
   仏式の場合は,遺骨や位牌は忌明けまで後飾りの祭壇に安置しておきます。僧侶が一緒に帰宅したときは「還骨勤行」のお経をあげますが,読経中,喪主から順に焼香(線香)をし,故人の冥福を祈り,線香をあげます。このあと精進落としの席へ移ることになります。
   神式では本来,火葬後,墓地に行って遺骨を埋葬しますが,最近は,いったん自宅に持ち帰ることが多いようです。帰宅後,後飾りの祭壇に遺影と遺骨を安置し,斎主によって「帰家祭」が営まれます。
   キリスト教はもともと土葬で,火葬の習慣がなかったので,遺骨迎えや帰家祭のような儀式は行いません。
−精進落としの進め方は?

●出席するのは遺族や近親者,親しい人,世話役など
   一般的に自宅で精進落としをしますが,ホテルや料理屋などで行うこともあります。また,精進落としのかわりに折詰と酒を配る例もあります。
   精進落としの実質的な意味は,お世話になった人たちの労をねぎらうことですから,世話役や友人・知人など葬儀を手伝ってくれた人々に席に着いてもらいます。遺族はもてなしの側に立ち,席は末席になります。上座には僧侶や世話役代表が座ります。
●宴の前後に親族のあいさつを
   精進落としに先立って,喪主や親族代表が簡単なあいさつを行います。あいさつは,椅子席の場合も畳敷の部屋の場合も立って行います。あいさつは,ていねいな言葉で簡単に。また,お開きの前にも短いあいさつをして宴を終えます。料理が残った場合は,折りなどに詰めて持ち帰ってもらいます。
●僧侶や神宮などが出席を辞退したときは「お車代」を
   僧侶や牧師,神官などには,前もって「精進落としを行うことにしておりますが,ご同席いただけますでしょうか」と出欠をたずねておきます。
   出席される場合は最上座へ案内しますが,出席を辞退された場合は,還骨勤行や初七日の取り越し法要のあとに別室でお礼を述べ,「お膳料」と「お車代」を差し上げます。
●精進落としは一時間くらいをめどにする
   時間はだいたい一時間〜一時間半程度にします。遺族だけでなく,世話役や葬儀を手伝ってくれた人も疲れていますし,遠方から来ていただいた方もあるでしょうから,一時間をめどに喪主があいさつをして切り上げます。また,遅くまで引き止めないようにします。
●手伝ってくれた人たちに「車代」を
   お開きのあと,手伝ってくれた後輩,部下たちに「志」としてお車代程度を渡します。「現金ではどうも」という方には,タクシー券などを。また供物やお菓子やくだものなども分けて差し上げます。
●親族と今後の法要など日程の確認を
   精進落としでは親族がそろっていますので,今後の法要や埋葬式などについての日時,通知範囲などの相談や確認をしておきます。

初七日の法要を精進落としの前に営む例が多い
   初七日の法要を精進落としの前に行う例が少なくありません。これは,親類縁者が遠方にいる場合や葬儀が友引などに当たって遅れていると,死亡日を含めて七日目にあたる「初七日」が近くなり,慌ただしくなるのが理由です。初七日の法要を取り越して行うときは,還骨勤行と合わせて行われます。

−精進落としに招かれたときのマナーは?

●遺族からすすめられた席につく
   精進落としは,遺族,近親者のほかに,親しい人や世話役などが出席します。遺族からすすめられたら,なるべく出席するようにします。
   座席は,一般的には上座を避けて座りますが,すすめられた席がたとえ上座でも遠慮せずにすすめられるままに座り,遺族の気持ちを素直に受けるほうがよいでしょう。
●故人の死に結びつくような話題は避ける
   精進落としの席はくつろいでよいのですが,大声で話したりすることは控えましょう。故人の思い出話などを交わしたりしますが,故人の最期の様子などを話したり,病気のことの詮索などを行うのはマナー違反です。
   また,お酒を飲み過ぎて気まずい雰囲気にならないように気をつけたいものです。
●遺族への慰めや励ましの言葉は?
   精進落としの席で,改めてお悔やみを言う必要はありません。通夜や葬儀などで張りつめていた気持ちがゆるみ,急に気落ちしたり,疲れが出たりしますから,「お力を落とさずに」や「お寂しいでしょうが,元気をだしてください」などと,遺族を励ましてあげましょう。このような言葉が,どれだけ遺族を力づけるかを知っておきましよう。

精進落としの席でのあいさつ
   精進落としの席では,喪主が開会と閉会のあいさつを行います。あいさつの内容は,葬儀に参列,協力してもらったことのお礼が主になります。
   出席する人は,身内や親しい人たちですので,堅苦しい,長々としたあいさつは不要です。開会と閉会のどちらも簡単にあいさつします。
   開会では,葬儀に参列してもらったことと,さまざまな協力にお礼を述べ,料理をすすめます。
   「本日は,故○○○の葬儀にお力添えをいただき,まことにありがとうございます。おかげさまで,無事に葬儀を終えることができました。故人もさぞ喜んでいることと存じます。改めてお礼申し上げます。
   ここにささやかではありますが,精進落としの小膳を用意いたしました。どうぞお召し上がりのうえ,おくつろぎください」
   宴のなかでは,喪主は,一人一人にお酌などをして感謝の気持ちを伝えます。
   閉会の場合も,喪主が頃合いを見計らって立ち,あいさつをします。
   「本日は,皆様まことにありがとうございました。もっとごゆっくりしていただき,○○○の思い出を語っていただきたいところですが,あまり長くお引き止めしては申し訳ありませんので,このへんでお開きにさせていただきたいと思います。これからもお世話になることと存じますが,どうかよろしくお願いいたします」などといったあいさつで締めくくります。