葬儀の後始末
−形見分けは,いつごろ,どのように?
●忌明けの法要をすませてから行う
   仏式では,四十九日の忌明けの法要をすませてから行いますが,三十五日を忌明けとする場合は,三十五日を機に,また神式では,五十日祭,あるいは三十日祭。
   キリスト教ではそのような習慣はありませんが,一か月目の召天記念日を目安に行うケースが多いようです。
   法要を営んだあと,遺品を贈る人たちを自宅に招いて行うか,改めて先方へ持参します。
●受け取る人の身になって品を選ぶ
   形見分けは,故人と親交のあった人に身近に置いて思い出のよすがにしていただくために,遺品を贈るものです。ですから,ほんとうに喜んでくれる方に贈らなければ意味がありません。交友のありかた,先方の年齢,好みなどを考えてふさわしい品を贈るようにします。
   品物としては,衣類,装身具,家具,身辺の小物類などが一般的です。
   使っていたものを贈るのですから,「お使いいただけるでしょうか」という気持ちで。遺言がある場合は,その旨を伝えて打診します。
   贈る品は慎重に吟味し,ひどく傷んだものや汚れたりしているものは,先方から強い希望がないかぎり,贈るのを避けたほうがよいでしょう。
   形見分けする品は,衣類ならクリーニングに出しておきます。小物類などは,ほこりや汚れなどをきれいに取り除いておきます。
●目上の人へは形見分けをしない
   そもそも形見分けは,親のものを子に,兄姉のものを弟妹や甥・姪,あるいは後輩にというのが本来の姿です。ですから,故人より目上の人に形見分けを差し上げるものではないとされています。ただし,目上の人でも希望があった場合は,分けてもかまいません。
   また身内のなかでは,子のものを親が,弟妹のものを兄姉が分けてもかまいませんが,親族でも故人より目上の人には控えます。
●形見分けは包装せずに贈る
   形見分けの品は,箱に入れたり,贈り物のように包装したりせずに,半紙など白い紙で包み,水引きはかけずに「遺品」「偲び草」などと表書きして,直接手渡します。ただし,箱入りの装身具や美術品,たとう紙に包まれた和服などは,包装のまま前記の要領で手渡します。また送るときは,最低限の包装をしますが,別便であいさつ状を出しましょう。
   最近,形見分けのためにわざわざ新品を購入して贈る人がいますが,これでは形見分けにはなりません●高価な品は,贈与税について配慮を
   形見分けの品でも高価な場合には,相続財産と見なされて贈与税の対象になってしまいます。美術品や装身具などを形見分けする場合は,贈る相手の負担にならないよう気をつけましょう。また先方が了解したなら,贈ってもかまいません。
−蔵書やコレクションはどのようにしたらいい?
●研究機関や団体に寄贈する
   趣味や研究で,故人が集めた蔵書や資料などは,同じ趣味や研究を行っている後輩や友人などにたいへん喜ばれることがあります。また,コレクションもその質や量によっては,研究機関や団体などに寄贈する方法もあります。故人のせっかくの蔵書やコレクションを喜んでもらえるところに贈ることができたら,これほど故人のよい供養になることはありません。
●衣類などは施設に寄付をすることもできる
   形見分けをしても,まだ十分に着ることができる衣類がたくさんある場合は,施設に寄付するとよいでしょう。市区町村の役場の福祉課に連絡をして,衣類などを必要としている施設を紹介してもらいます。
   衣類は,すぐに着られるようにクリーニングに出すなどしてきれいに整えます。
   また,故人が使っていた布団は,洗って仕立て直しするとよいでしょう。ただし,伝染病などで死亡した場合は直ちに処分しなければなりません。医師の指示に従って行い,近隣に迷惑をかけないようにします。
−形見分けの受け方は?

●特別な理由がないかぎり受ける
   遺族から形見分けの申し出があった場合は,特別に何か理由がないかぎり受けるのがマナーで,返礼の品は必要ありません。たとえ高価な品であっても,お返しはいりません。遺族の申し出を遠慮せずに素直に受けておきます。   ただし,第三者に譲ったりすることは禁物です。遺品を大切にすることが故人の供養になるのですから,いただいた品は大切に使用するようにします。

遺品の中で保存しておくもの,整理の仕方は?
   一般的に形見分けは忌明け後に行いますから,遺品の整理は,形見分けを考えて少しずつ行っていったらよいでしょう。高価な美術品などは,相続税の対象になりますから考慮しながら行います。
   そのほか故人の日記や住所録,手帳や手紙などは,年賀欠礼状を出すときなどの資料になりますから,最低一年〜ニ年は保存しておくようにします。